ラグジュアリーな日常

忘れんうちに書いとこ書いとこ!

『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳

タイトルを見ただけではどの様な本か想像できなかったが、一読後、「なるほどな」という気分になる。

『親は子を救うために「心の病」になる』パターンが多いと思っていたが、そうではないようだ。『子が親を救うために「心の病」になる』のだ。

 

著者の論理の前提として、社会に適応していくための心の機能を「心理システム」と呼び、その構築には当然ながらお母さんの影響が多大であるとのことだ。

したがって、親子の関係性により「心の病」の病態も大きく異なる。大別すると下記の3つとなる。

 

(1) 普通の親子関係で育った子

(2) 虐待を受けて育った子

(3) 特殊な親子関係で育った子

 

これらのケース分類を前提に、著者の臨床経験から具体例を細かにあげている。余談ではあるが、小説を読んでいる様な気分にさせられる程、一つ一つの臨床例に心をうたれる。

 

脳機能や精神の障害を伴った引きこもりはなどとは異なり、子が親の辛い生き方を引き継いだために起こる不登校や引きこもりを「社会的引きこもり」と定義する。

「引き継いだために…」とは、親が我慢をしてきた人生だと我慢しない自分の子を許せず、自分の子にも自分と同じように我慢を求めてしまい、親が感じていた苦しみを子が引き継ぐということだ。そして、子どもは親の苦しみを背負い「心の病」となるのだ。

 

なんとも悲しいストーリーであるが、「辛い生き方を背負っているとその怒りの部分だけが強くなって、他の穏やかな感情が相対的に抑制されてしまう」(p106)。上にあげた事例は、普通の(1)親子関係で育った子が「心の病」を背負う過程である。

 

(2)虐待を受けて育った家庭では、事態はさらに複雑となる。虐待を行ってしまう親は子供時代に虐待を受けて育った割合が高い。そして、虐待から生き抜くために「善と悪が逆になる」のだ。

自分が生き抜くことは「善」で、自分を虐待する親は「悪」である。しかし「善」を実行するためには「悪」に耐えるしかない。したがって、「悪に耐えることが善」となってしまう。そしてこの連鎖は、親→子・親→子となり引き継がれてしまう。

 

最後に(3)特殊な親子関係についてであるが、一例として、親が発達障害等で子に社会的に価値が共有されている「愛」「お金」「賞賛」等を伝えておらず、子はその成長過程で普通の人たちと価値の共有が出来なくなり、自分が社会から取り残されている感覚になる。そして、生きてはいるもののどこにも「社会的な存在感」が満たされないのである。

 

タイトルのプロセスはこのように捉えられた。

不登校などの問題はその実行者である子のみに原因が転嫁されやすいが、その背景には当然家庭環境や親子関係が潜んでいるのである。当たり前だが、丹念なカウンセリング記録を基に読み解くと、新しい発見の様に感じてしまうので驚きだ。