頑張って続けます

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『子どもの睡眠』神山潤

睡眠が子ども(特に乳幼児)もたらす影響について簡潔に書かれた本。


100ページ足らずで図も多く、スキマ時間に読める様に構成されたいる。想定する読者としては、初めての子育てに悩むお母さん方であろう。文体もとても暖かく、素直に受け入れられる。


あくまで睡眠は個人的要因が大きいと前置きしつつも、遅寝遅起きがもたらす悪影響について述べている。よく言われる話ではあるが、人間の体内時計は25時間であり、地球の24時間とはズレが生じるので、朝起きて光を浴びて体内時計をリセットすることの重要性を述べている。その根拠として、新生児の睡眠表を持ち出しているのは面白い。


新生児の1日ごとの睡眠を表にして見ていくと、入眠時間が少しずつ遅くなっている。これをフリーランといい、人間の体内時計がズレていることから生じる現象らしい。新生児たちは自分の体内時計を生まれた世界の時計に合わせる為、日々奮闘しているというのだ。だから、夜泣きするからといって夜に光を浴びせたり、昼寝が多いからといって暗い部屋で過ごしたりしてはいけないというのである。この世界の1日のリズムを体得している修行中といえよう。


なぜ光が睡眠に関係するかというと、メラトニンの分泌に影響しているとのことだ。メラトニンは光によって分泌が抑えられる為、夜間に明るいところにいると分泌が抑えられてしまう。したがって、日中は光の中で過ごし、夜は暗い中で入眠体制に入ることができれば、メラトニンは夜間にしっかりと分泌される。こうすることで、メラトニンがもつ抗酸化作用(老化防止作用)やリズム調整作用等がうまく機能するのである。本書自体が2003年発行で研究として最先端とは言えないが、子どもの睡眠を研究している三池氏の編著書である『不登校外来ー眠育から不登校病態を理解するー』(2009)にも同様の記述が見られる。


では、睡眠が具体的にどの様な影響を与えるかについてであるが、著者はセロトニンの分泌に注目している。セロトニン神経伝達物質であり、分泌障害が起きると精神的に不安定な状態となる。事実、うつ病患者へセロトニンを高める薬が出されている。

セロトニンはリズミカルな筋肉運動によって分泌されるとのことである。遅寝遅起きで日中の活動が抑制されると、リズムを調整するメラトニンと精神安定に関わるセロトニンの分泌が抑えられてしまい、攻撃性が高まったり不安に襲われたりしてしまう。あくまで著者の推論であると明記されていることは付言しておく。


証拠に基づいた論理展開は本書の趣旨とは離れているのであろうが、限られた紙面の中で睡眠についてわかりやすく述べてくれている。